無音の中で

ビール、お茶、ミルクのコップねらってる
　　　　　　　　底の数滴君なめようと

うまいなぁ音は立てない割りもしない
　　　　　　　　コップを倒す君の口わざ


夢の君自分の死んだこと知らず
　　　　　　　　きょとんとした顔わたしに向ける

夢の君１ヶ月後に復活し
　　　　　　　　これまで生きた次を続ける

夏の苦心

灼けた道肉球やけどをしないよう
　　　　　　　　ベビー靴下履かせ外出る

自転車屋にて
同伴可表示ないけどダメもとで
　　　　　　　　尋ね抱っこの入店勝ち取る


時経てば思いは薄まるものなのか
　　　　　　　　昨日浮いても今日沈み込む

家計簿の君の項目ゼロになる
　　　　　　　　それが怖くて花代を書く

効果大

あごを上げ気持ちよさそに首伸ばす
　　　　　　　　効果音つけ君はニュウウウ

君いれば風邪のひとつもひきもせず
　　　　　　　　家事にも気合い入りがんばる


人間でなくてよかった
　　　　　恋もせず海も見ずにと思うことない

早かった短かったと人は言う
　　　　　　　　深さ重さはわたしだけのもの

エプロン犬

首巻きじゃ暑さ取れずにとり急ぎ
　　　　　　　　保冷ジェルのエプロンを縫う

耳握り体の熱さ確かめる
　　　　　　　　保冷ジェルが今日は４つね


あれほどの暑さ乗り切り生きたのに
　　　　　　　　寒さも耐えて頑張ったのに

生きるのに必要なものこれだけと
　　　　　　　　君が残した物が教える

我が家デビューで耳が立つ

この家に来るのを待っていたのかな
　　　　　　　　寝た君の耳ぴんと立ったよ

片時も目が離せない君赤ちゃん
　　　　　　　　２４時間睡眠不足


人生がしんどい時には君がいて
　　　　　　　　気持ちをふっと楽にしてくれた

道端で立ち話するほどの友
　　　　　　　　残して君はいなくなった

夏はひたすら我慢

ハアハアと体の熱さ悲鳴上げ
　　　　　　　　床に伸びきりぐにゃぐにゃになる

猛暑の日午後の３時は魔の時間
　　　　　　　　バテバテの君猛獣になる


しっぽない？耳は立ってる？
　　　　　遠くから見えるワンコをつい確かめる

君いない理由を誰か教えてよ
　　　　　　　　時進んでも歩き出せない

犬好きの犬

人と犬両方いたら君いつも
　　　　　　　　犬のほう行く犬好きの犬

黒ラブのよだれ顔中かかっても
　　　　　　　　果敢に君は匂い嗅ぎにいく

しんちゃんは町の長老
　　　　　尊敬の念込めしずしず匂い嗅ぐ君

年老いて威厳たたえたしんちゃんの
　　　　　　　　ように長生きただただ願う

    しんちゃんは中型のミックス犬で、昨年大往生しました

太陽が好きなフレンチブルドッグ

暑いけどまぶしいけれどお日様に
　　　　　　　　顔向け君は光楽しむ

てこてこと少し早足
　　　　　まっすぐに駆け寄る君に両手広げる


家族でも涙の色が違ってる
　　　　　　　　いろんな愛に君包まれていた

納骨や供養聞かれる立場など
　　　　　　　　まさかわたしが先になるとは

クリッと見てる

生きている時間は毎秒輝いて
　　　　　　　　一期一会の濃い積み重ね

クリッとした丸い大きな目をした子
　　　　　　　　ばあちゃん君をかわいげに言う

なんでそう手間かかる犬飼ったのと
　　　　　　　　ほとほとあきれ ばあちゃんは問う


君はいつ天国のドアたたいたの
　　　　　　　　自分勝手に行ったらだめだよ

旅立つ その３

思い出す今がするとき蘇生法
　　　　　　　　絶対わたし生き返らせる

わかってたもうだめなことそうだけど
　　　　　　　　残る体温まだだめじゃない

死ぬことは電灯スイッチ切るように
　　　　　　　　パチンと消えて闇となること

解剖をしてまでも君死んだ理由
　　　　　　　　事実真実つきとめたかった
　　　　　　　　

夢で会えたら

自他共に認める立派な親バカを
　　　　　　　　誇りに思う君は最高

年上のクールなメス柴ももちゃんに
　　　　　　　　つきまとってはうるさがられる

引っ越した大好きももちゃん家の前
　　　　　　　　また立ち止まりじっと待ってる


願ってた夢で再会果たしても
　　　　　　　　目覚めて不在胸につきささる

かわいさ余って愛しさ100倍

一生に１度のチャンスになるかもと
　　　　　　　　一番好きなフレブルを飼う

犬を飼う最後の難関ペットロス
　　　　　　　　耐えると決めて君を迎える


君の死に責任あるとするのなら
　　　　　　　　わたししかない　そうなのだろう

今もまだたくさんの君ここにいて
　　　　　　　　寝てる伸びてるわたしを見てる

笑い顔をしないフレブル

意味でなく音と調子で理解する
　　　　　　　　声から気持ち君は読み取る

行儀よくいつもお口を閉じている
　　　　　　　　“笑った顔”を見たことがない

君の顔しわをにおえばなんでだろう
　　　　　　　　ちょい魚くさい“いぬくさ犬お”

君が来て全室エアコン完備なり
　　　　　　　　わたしが一番喜んでいる

永遠の不在

ロケットの中からひげをつまみ出す
　　　　　　　　もういないもういない君いない

わからないどうして君がいないのか
　　　　　　　　思考がとまる心がとまる

抱きしめて顔をうずめるものがない
　　　　　　　　胃がせり上がりぎゅっと手握る

噛んだきず汚した跡も付いた毛も
　　　　　　　　ずっとこのまま朽ちてゆくまで

どの部屋も立入歓迎

どの部屋も自由に行き来してる君
　　　　　　　　遠慮は　なしが無性にうれしい

ガラス戸に黒くて丸い影動く
　　　　　　　　またお風呂場をのぞきに来たな

右手あげガラス戸かりかりたたいてる
　　　　　　　「ちょっと開けて」君はかりかり

戸を開けてお湯の匂いを嗅いだあと
　　　　　　　　納得したよに君は立ち去る

呼吸が特に難しいフレブルだった

また息が止まっているよ
　　　　　眠る君見つめるわたしも息止まってる


軽く鼻つまんで息を吸ってみる
　　　　　　　　君の苦しさ初めてわかる

歩かないのではなくて歩けない
　　　　　　　　君のしんどさ今ならわかる

本当は好きなワンコを追いかけて
　　　　　　　　走りたかったよね遊びたかったよね

毛すきはちょっと楽しみ

溺れるよ水を飲もうと入れ物に
　　　　　　　　口つけたのに君はまた寝る

ほじほじと君の毛をすく
　　　　　ごっそりと抜けるの楽しい手が止まらない

抜けた毛で作ってみたいぬいぐるみ
　　　　　　　　君の匂いの小さな君を


大輪の花のすき間に小花挿す
　　　　　　　　心を埋める作業している

丸っこい体

かわゆす君呼び名はいつも愛いっぱい
　　　　　　　　ときにおはぎでときにカブト虫


夜なんて明けるな君がいないこと
　　　　　　　　しらじら照らす光いらない

このひげがあったらクローン作れると
　　　　　　　　君を愛した人がつぶやく

一日に１時間だけ泣く時間
　　　　　　　　悔いて謝り恋いて求める

気高いわがまま

興味ないときはさっさとあちら向く
　　　　　　　　媚びない君をまぶしく思う

シャンプーが嫌いで気配察すると
　　　　　　　　置物に化けじっと固まる

帰宅して　君　足洗いたいときは
　　　　　　　　風呂場に行く！と抱っこ待ってる

君の顔何年経てばゴツくなり
　　　　　　　　ブサカワ犬になるのだろうか

フレブルは見てるとほんとに楽しい

アキレスをくわえ呼吸を確保する
　　　　　　　　いつもどこでも君の宝物

君見ると誰もが笑顔になっていく
　　　　　　　　将来きっとセラピー犬に

スーパーの袋から出た大根の
　　　　　　　　葉だけを君はちょっとカジカジ


君の毛がもう１本も落ちてない
　　　　　　　　洗面台の真っ白な上

全身で喜ぶ

お腹出す耳を寝かせる飛び跳ねる
　　　　　　　　しっぽを振らない君が喜ぶ

口元に白い差し毛が生えてきて
　　　　　　　　君は立派なおとなになった

寝る前のオシッコ当番父さんは
　　　　　　　　ホロ酔い機嫌で君抱き外へ

生きてきて良かった君に会えたこと
　　　　　　　　べたな感想本気で思う

会いたい

この世には納得のいく死、なんて
　　　　　　　　ないと知ってるわかってはいる

百首目の短歌のかたちをした涙
　　　　　　　　二度と会えない君に捧げる

お尻をちょこっとくっつけて

トコトコとそば来てお尻くっつけて
　　　　　　　　君は座るよ今充電中

朝８時君大好きなお兄ちゃん
　　　　　　　　来る方を見て二人して待つ

抱き上げた君に頬ずり
　　　　　ぬくもりと毛の感触に長生き願う


番組の中に元気なフレブルが
　　　　　　　　わたしは何を間違っていた？

初めて会った日

こんなにもピンピンとひげ顔中に
　　　　　　　　生えていること知らなかったな

「おとなしく抱かれているの珍しい」
　　　　　　　　ブリーダーさんの目が笑ってる

これからの１０年一緒に年取ろう
　　　　　　　　今日から君のお母さんです

口周り白髪で真っ白じいさんに
　　　　　　　　君がなるまで一緒に生きよう

何されても怒らない

         

                                 

何してもされるがままの君だけど
　　　　　　　　たまには少し嫌がりよね

身震いは後ろ脚まで伝わって
　　　　　　　　お尻振るよに君の体浮く

しあわせ？と君に何度も問いかける
　　　　　　　　「わたしはしあわせ」伝えたいから


袖口を君が汚したこの服は
　　　　　　　　洗えないままハンガーにある